STORIES Vol.2 後編
Our Destination
ミツバチたちと未来へ幸せを運ぶ

梅澤直美(養蜂家)
STORIES Vol.2 後編
Our Destination
ミツバチたちと未来へ幸せを運ぶ 梅澤直美(養蜂家)
NAOMI UMEZAWA
BEEKEEPER

5年後も好きなものと⾃分らしく⽣きる

それがこれからの秩序

「私の人生に山があってよかった。山登りをしていなかったら山梨に移住してこなかったし、ミツバチとも出会うことはなかった」クライミングを始めたのは29歳の時のこと。30kgの荷物を背負い、北アルプスの3000メートル級の山を1週間かけて登るなど、なかなかハードな山登りをしていた梅澤さん。そんな山登りの途中で見ていた岩稜帯の美しさに惹かれクライミングをするようになった。冬は、壁を登りながら雪山を登ったり、凍った滝を登るアイスクライミングを楽しんでいる。体力には絶対的な自信があった。だからこそ農業も、女性が1人でも絶対やっていけるという自信が。

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「ストイックにクライミングをやっていたので、怖いことも大変なこともたくさん経験しました。それに比べたら養蜂は、岩や崖から落ちて死ぬわけじゃない。仕事が辛い時はそう思って奮い立たせていましたが、最近は仕事に比べれば、山やクライミングは趣味で、遊びでしかないと思うようになりました。メンタル的に強くなりましたね。体力的、肉体的、精神的に、仕事と趣味の双方が良いように影響し合うようになってきた。例えば、高い山に登れたら、巣箱を増やしてもっとはちみつを取ろうとか。今年目標にしていた以上にはちみつが取れたら、あの山に挑戦してみようとか。どちらかで身についた自信が、どちらかの新たな挑戦に繋がっている実感があります」

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山とミツバチ、趣味も仕事も自然と共に生活しているからこそ、食べるものや自身のケアで使うものは、不自然なものではなく、自然由来のものを選んでいる。オーガニックなものを摂っていると、ミツバチたちも心地よく生活ができるのではないかと思うから。

「養蜂とクライミング、どちらも高く評価されていたとしても、いつも疲れた顔をして綺麗にしていなかったら、それって幸せなのかなと思いますよね?だから、定期的にヨガをしたりマッサージに行ったり体のメンテナンスは大切にしています。40歳を超えてから変わってきた髪質や肌質も、年齢が出やすいので、なるべく自然のもので、自然体で綺麗にいられるものを選んでケアしています。ここは水も空気も綺麗なので、それが一番効果的なのかもしれないですけどね」と笑いながら梅澤さんは言う。

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初年度は200kgしか採れなかったはちみつの収量も、2年目は300kg、3年目は370kg、今年は450から500kgは採りたい。そして来年は600kgを目指すと意気込む梅澤さん。来年、養蜂家として独立して5年目を迎える。その堅実で勇敢な挑戦が形となり、確かにそこに生きている。

I’ve been here for five years and I never tire of the scenery. I could gaze out upon it for another five or ten years.

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「5年後、さらにその先の未来に向けて思い描いていることが2つあります。1つは、ミツバチを使った地域活性と農業活性。ミツバチはひとつの環境指標だと考えていて、彼らが生きられる環境というのは、人間も絶対に幸せに生きられる環境。人間が食べる食物のうち9割が農作物、1割が畜産や水産物。その9割の農作物のうちの7割が、ミツバチが受粉することによって作物になる食物です。彼らが受粉しないと私たちが食べるものが育たない。だからこそミツバチが幸せに生きられる環境を作ること。それが1つの目標。2つ目は、生活あるいは人生において良いバランスを取り続けること。今はまだ仕事中心の生活。仕事をするためだけに山梨に移住してきたわけではないので、自分がやりたいクライミングとのバランスを上手に取って、より生活を、人生を豊かにしたい。それでも今年は少し余裕ができた。自分でこう言えるということは、そうなのかなと。余裕を感じられないと仕事を続けていく意味が見出せないし、なりたい自分になるために、自分を導いていかないと、続かないと思うから。5年いて、一度も飽きずにこの景色を見ていられた。5年後も10年後も、この景色を見ながら過ごしたい。それってすごく贅沢ですよね」

好きなものも養蜂への姿勢も変わらない。でも梅澤さんの今と未来は繋がり豊かになっていく。梅澤直美という人を、正直に投影するミツバチたちとともに。

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PROFILE

梅澤直美/うめざわなおみ 神奈川県出⾝南アルプス市在住。趣味の⼭登りやクライミングが⾼じて、東京から南アルプス市に移住。2015年地域おこし協⼒隊員として、農業に従事。養蜂の世界に出会い、ミツバチの⽣態や働きを知るにつれて魅了され、2018年⼥性養蜂家として独⽴。

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