STORIES Vol.3 後編
For Pleasant Days
日常にささやかな幸せを

nichidori (観葉植物生産者)
STORIES Vol.3 後編
For Pleasant Days
日常にささやかな幸せを nichidori (観葉植物生産者)
TAKESHI OMURA
Ornamental Plant Grower

一つ一つの考察と挑戦が

心ときちんとつながっている

“日常に緑を”という造語から名付けられた『nichidori』。緑=植物を通して、いつもの日常を少し豊かにしたい、その願いが込められている。植物と一緒につける生産者を示すラベルもこだわった。土に刺すタイプは、家の形。まるで家の後ろに大きな木が聳えているように見えるから。大きなサイズの植物にぶら下げるタイプは、生活の1ピースに植物をという意味を込めてパズルのモチーフにしている。裏面にはnichidoriの連絡先が記されている。植物で困ったことがあれば、すぐに連絡ができるように。これらの豊かな発想と表現は普段の生活や買い物からヒントを得ている。

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「昔から服が好きで、ずっと同じセレクトショップに通っています。そこに行けば好みのものが必ず見つかるし、ライフスタイルにあったものを提案してくれるから。お店の人に会いに行っている感覚もあります。買ったものは、一つ一つに思い出と物語があるから長く大切にするし、捨てられないのも悩み。思い出を買っている感覚に近いかもしれません。僕らも植物においてそう在りたい。nichidoriのだから買ってみようとか、また買いにいこうとか。他の業種の方々がやっているようなことと結びつけられると、植物を作るだけじゃない、また違う農家になれるような気がする。そして刺激や新しいアイディアがもらえる。だから人とのつながりが好きなんです」

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大村さんには職業病がある。テレビやSNSで映り込む植物を見て、鉢やサイズ感から、自分たちが作ったものはもちろん、どこの農家さんのものか気づくことがあるというもの。nichidoriの植物はバイヤーや卸問屋を通して小売店に卸されている。顔を知っているとその人に合わせたおもてなしをするのが、彼らの強みでありオリジナリティ。だからわかる。

「ミックスを変えたり、幹だしを好みのものに変えたり。できる限りのおもてなしをするようにしています。会った時に、反応を聞くと、お客さんの傾向を教えてくれる。お客さんとバイヤーがいいと思うものって違ったりするんです。情報交換をすることで、僕らは常に需要のあるものを作れる。だからテレビやSNSでうちの植物を見かけると、嫁に出した子供を見ているような感覚になるんです」

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We believe in having fun, enjoying ourselves, and being excited when working.

専門的な仕事をしているからこそ、専門家の意見は信じて取り入れる。自分のケアについても同じように。5年前nichidoriを始めたばかりの頃は、自分たちが作っているものが果たして売れるのか、不安ばかり考えていたけれど、納得がいくものを作れるようになったのも、先輩農家さんたちからたくさんのことを学んだから。

「今、自信はあります。絶対的な自信ではないですけど。売れるものを相手に合わせて作るということから、自分たちの作ったものを売れるように働きかける。買ってもらえるように働きかけることができるようになりました。そこは5年前とは絶対的に成長できた部分。毎年少しずつアップデートしてみたり。同じものを作っていたけれど、飽きてきたので、ちょっと変えてみたとか。僕らが飽きたということは、買っている側も飽きているはず。なんか変わった?とか、アップデートした方がその先の可能性が広がる気がします。やってみて見えることがあるから、変化を恐れないようになった。ダメだったら、また挑戦してみればいいって」

“飽きた”という感覚は、彼らにとって変化や挑戦への指針になっている。それを“飽きた”という言葉を使い、軽やかに表現する。その一言を聞いてnichidoriの在り方や2人の言動のすべてに合点がいった。

「信念は、僕らが楽しいとか面白いとか、ワクワクしながら仕事をすること。それができていないと買ってくれる方に何も伝わらないと思うんです。これしか作れないからと言い訳をして、作業として生産しているだけでは、どこかでその安直な気持ちが伝わってしまう気がする。楽しいから、工夫もできる。見えない部分だけど、見えていると思って仕事をしています。だからこそ、僕らが“飽きた”と思ったら何かを変えないと、将来的に結果につながってくると思う。僕らと一緒にワクワクしてほしい。共有できることで、もっと多くの人が植物を愛で、生活が豊かになるところにつながって、5年後、10年後にいい変化が起きているはずと期待しています。そういう意味でも“飽きた”という直感は、変化のタイミングを知らせてくれる合図のようなもの。次の楽しみを伝えていくために、自分たちが変わっていくということですから」

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わからないことがあると立ち止まり、向き合って直ちに解決する。そして自分の感覚を信じているからこそ、一石を投じていく。例えていうなら、彼らは植物生産という大海原を、nichidoriという船に乗り、長い航海をしているような。どんな逆境が襲ってこようが、すごく大きな羅針盤を持っているから、きっとどこまでも旅という挑戦を続けられる。そしていつか新しい世界を作り出すことができると願っています。

PROFILE

⼤村剛史・千莉奈 おおむらたけし・せりな 1980年より愛知県渥美半島にて観葉植物の⽣産業を営む⼤村園芸の⼆代⽬として夫婦でその屋台⾻を担う。 中規模農家だからこそ出来ることは何かを常に考え、そこから⽣まれる想いやアイデアを込めた植物の⽣産を⾏う。2016年、新たに活動名義をnichidori とし、“農業”という枠に囚われない新たな取り組みに挑戦している。

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