STORIES Vol.5 前編
My Usual Routine
リズムが生まれる心地よいスピード感

瀬⼾優(彫刻家)
STORIES Vol.5 前編
My Usual Routine
リズムが生まれる心地よいスピード感 瀬⼾優(彫刻家)
YU SETO
Sculptor

何事もポジティブな思考で変換し実現していく

オセロット、チーター、ライオン、ウサギ、犬、フクロウ…テラコッタの作品にガラスの瞳が入ると命が吹き込まれたように、生き生きと見える動物たち。見つめていると思わず引き込まれる、そんな表情豊かで今にも動き出しそうなリアリティを感じる作品を作るのは、彫刻家・瀬戸優さん。現在27歳の若手彫刻家だ。彫刻との出会いは、美大予備校で。その後東京藝術大学へ入学し、彫刻を学んだ。

「幼い頃から動物や自然科学が好きで動物園や博物館へ行ったり、図鑑を見ているのが好きで、家に帰ってから見てきた恐竜や動物の絵を描くと母に褒めてもらった。それが嬉しくて絵を描くことが好きになりました。美大へ進路を決めたのは高校三年生の時。特段絵が上手かったというわけではなかったんですけどね。それから美大予備校に体験に行って、初めて彫刻という科目があることを知りました。そこで立体で作られる彫刻の世界に興味を持ち、彫刻科を目指すことになったんです」

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どちらかと言えば厳しい家だったという瀬戸家。大学卒業後は、企業への就職以外は許されなかった。だからこそ早い段階で結果を出さないとといけないと思い、瀬戸さんは在学中からアーティスト活動を始めた。

「大学一年生の頃、一日一枚動物の絵を描いてTwitterに載せていたところ、だんだんとフォロワーが増え、その絵を売ってくれませんか?という方が現れました。自分の描いた絵が売れる、という初めての体験でした。それが作家活動の始まりとなり、彫刻家を目指すきっかけの一つ。今思えば、当時は発信力が強すぎて、作品の供給とクオリティが合っていなかったなと。絵がどんどん売れるようになっていくうちに、このままだとイラストレーターになってしまうのではないかという悩みもありました。大学院一年生で『ART FAIR TOKYO』に出展することになり、そこで成果が出なければ就職しようと考えていましたが、完売という結果を残すことができたので、そこで彫刻家として活動していく覚悟を決めました」

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粘土で形を作っていく粗付けから、焼き上がって色付け、最後に目をいれる。その間に乾燥や、焼いて冷ますなど様々な工程を経て、一つの作品を作り上げるまでに最速でも半月かかるという。そんな制作段階で大事にしているのが、“切り替え”と“リズム”だ。

「プライベートと仕事の切り替えが明確にあること。作業はだいたい10時から18時までの定時制にしていて。例えば、造形や、毛の一本一本といったリアルの追求は、時間を無限にかけられる。だからこそ限られた時間の中で、集中して制作する。そのスピード感や色付けの荒さ、指の跡が残っているからこその形や味が出て、作品のテーマである“野生”だったり、“リアルさや生命感”、“オリジナリティ”に繋がっていると思っています。作業中は短距離走をしているような感覚に近いですね。それから仕事の種類も意識的に増やすようにしていて、彫刻作品を作る以外にもデザイン業務をしたり、写真を撮ったり。作品を作りたくないときは絵を描いたり。絵を描きたくないときは、事務作業をしてみたり、切り替えに近い感覚で作業にリズムを作ることでモチベーションを維持しています」

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“I’m a positive person, so I’ve never really had any setbacks. Although I have faced some things that others may consider setbacks.”

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彫刻家という仕事において、一番テンションが上がる瞬間は物事が決まるときという瀬戸さん。企画を考えることが好きで、常に頭の中にあるたくさんの作りたいものの中から何を作ろうとワクワクしながら次の作品や展示の構想をしているという。

「ポジティブな性格なので、挫折をしたことはないです。人によっては挫折だったことはあったかもしれないですけどね。例えば、展覧会がコロナで延期や中止になってしまったとしたら、すごく落ち込んで、“この展覧会にかけていたのに”とネガティブ思考になる人もいるかもしれないですが、僕はそれならオンラインで何か売れる仕組みを作ろう、ギャラリーにデータを渡して動いてもらおうとか、常に前向きに考えています」

承認欲求が強いと瀬戸さんは自分を客観視する。自分で作って眺めているだけでは物足りない。人に見てもらわないと意味がない。その強い意志が原動力につながっている。

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PROFILE

瀬⼾優/せとゆう 1994年神奈川県⼩⽥原市⽣まれ。⾃然科学を考察し、主に野⽣動物をモチーフとした彫刻作品を制作する。彫刻の素材であるテラコッタ(⼟器)は作家の触覚や軌跡がダイレクトに表⾯に現れ、躍動感のある作品となっている。画廊での展⽰販売を中⼼に国内外へ幅広く作品を提供。

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