STORIES Vol.6 前編
Everything is an accessory
暮らしの中のアクセサリーを生みだす

⽵沢むつみ(⾰作家)
STORIES Vol.6 前編
Everything is an accessory
暮らしの中のアクセサリーを生みだす ⽵沢むつみ(⾰作家)
MUTSUMI TAKEZAWA
Leather Craftsman

⽇常にある美しいものを表現するセンスへの憧れ

竹沢さんの中の“好き”という感覚を導いてくれた人。それがネイチャークラフト作家の長野修平さん。何度も読み返したであろう、その痕跡が残る2冊の本をパラパラとめくり、長野さんが建てたこのアトリエ小屋が載っているページを見せてくれた。この場所は、 身近にある自然素材で暮らしのものを生み出している長野さんから受け継いだ大切な場所だ。使用できる期限は10年程と言われたが、修繕と補強を繰り返し20年が経つ今もなお、いい味を醸し出しながら綺麗な状態で、竹沢さんのアトリエとして恩方の森に在る。

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レザーと彫金を使ってもの作りをしている作家の竹沢さん。専門学校時代に、ジュエリー制作を学び、この道へ。もともとは八王子市内の実家で創作を行っていたが、手狭になってきたこと、レザーに穴を開ける時のカンカンという作業音が住宅地の中では気になること、自然の近くで創作をしたいという気持ちがこの場所への移住を決意させた。この場所との出会いは、15年程前。この地域で開催されている工房展、現『陣馬山麓アトリエ展』を訪れたことがきっかけに。現在は出展者として竹沢さんも参加している。

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「『陣馬山麓アトリエ展』は、この地域で活動されている陶芸家の方が焼き物を出していたり、染色作家、木工作家、ガラス作家などそれぞれの知り合いの作家さんらを招いて出展してもらっている合同展。お客さんとして初めて訪れた時に、このアトリエを見て、直感的にすごく好き!こんなところでもの作りがしたいと思ったんです。長野さんとの出会いもそのイベントで。今でも鮮明に覚えています。流線形が美しい流木で作られたベンチが置いてあって、話しかけたら、私が気に入ったことを喜んでくれて。自然にできた流木の形を“形が色っぽいでしょう”っていう言葉で表現するその感性に憧れました。その後タイミング良くこの近くに住んでいた友人が、よかったら住まない?と誘ってくれたのが8年前のこと。引っ越してきた当時は、長野さんも近くに住んでいて、教わって作った作品もあります。私にとっては、人生の分岐点に出会った大きな存在であり、憧れの方である。長野さんの引っ越しを機にこのアトリエ小屋を引き継ぎました」

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自身で創作をする前は、恵比寿にある革物屋さんで働いていた竹沢さん。そのお店が掲げる“すべてがアクセサリー”というコンセプトに共感し、自分のもの作りにおいてもそうありたいと誓った。創作も生活の場も、どちらかと言えば、不便な環境に身を置くことをあえて選択。もちろん不安や心配事もあったけれど、それ以上にここで暮らすことの期待度や楽しみの気持ちが強かった。結果的に、その選択は、後々彼女の作風にも変化をもたらすことになる。

「手作業の荒さ、よくいえば温もりが残る感じにしています。温もりという言葉ではちょっと綺麗すぎちゃうかな、手仕事感が残るような。アクセサリー製作では型取り以外の工程はすべてここで行っています。機械にあまり頼らないように、革製品はすべて手縫いで。機械では出せない味や、ミシンでは出せない縫い目。そういうのが私の作品の特徴です。コロナ禍もあって、暮らしのものにも目がいくようになり、身につけるものだけでなく、もともと作っていたティッシュケースのほかにも、モビールや一輪挿しといった暮らしの中のアクセサリーも作るようになりました。家が身に着けるアクセサリーですから。“すべてがアクセサリー”というテーマに少しずつ近づいてきた、明確になってきた感じがします」

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I tend to choose places that are quite inconvenient to live and work in.


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以前旅したカンボジアのアンコールワットのほとりにクローバーがたくさん咲いていて、それがすべて四葉のクローバーだったそう。こんなこともあるんだと、竹沢さんがふと空を見上げるとトンボがたくさん飛び回っていた。それを見た時に四葉のクローバーがトンボになったというストーリーが浮かび、のちに葉が羽に変わる形を表現したモチーフのアイテムが生まれた。この出来事は竹沢さんのものづくりにおいての核となり、ストーリーが生まれるものづくりがしたいと思わせてくれた大切な出来事だった。

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PROFILE

竹沢むつみ/たけざわむつみ 1983年、東京都八王子市生まれ。専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ卒業。レザークラフトとアクセサリーを制作する作家として活動。作品の屋号である「salikhlah(サリヒラフ)」は、モンゴル語で「風が吹く」という意味。

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