STORIES Vol.9 後編
Don’t set limit
限界は⾃分で決めないこと

根本理絵(パティシエ)
STORIES Vol.9 後編
Don’t set limit
限界は⾃分で決めないこと 根本理絵(パティシエ)
RIE NEMOTO
Pâtissier

誰かを少しだけ幸せにする

そんなお菓子作りをしていきたい

東京・深大寺のすぐそば。静かな住宅街のところどころに野畑も存在するのどかな東京の郊外に、一軒家の薪火料理の店Maruta(マルタ)はある。店の中央には、店名の由来でもある丸太が常にくべられた大きな薪火のオーブン。向かいには広々としたオープンキッチンがあり、料理人たちが腕を振るう姿をゲストは食事を楽しみながら眺めることができる。“ローカルファースト”というコンセプトを掲げ、野菜などの食材は、地元の農家から。またレストランの裏に広がるエディブルガーデン(食べられる庭)で採れたハーブや果実を使ったメニューを提供している。

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「野草や、木、フェイジョアなど、⾝近にあるけれど、今までは⾷材として⾒ていなかったものや⼀般流通していないもの、メインにはならないような食材を使ってデザートメニューを考えています。季節ごとに収穫した食材を、とりあえずこうしておこうといった感じでシロップにつけたり、塩漬けにしたりして保存食に。あとから、これにあれを組み合わせみようと、足していく作業をしてメニューを考えています。レストランの時は、これには薔薇が合うな、どこから取り寄せようと考えていたから真逆ですよね。今までとは違う思いつきもあって、よりクリエイトしているという感覚になりました。味や香り、季節の果物と庭のもの、その組み合わせ方を考えるのが楽しいです。それにMarutaはオープンキッチンなので、見られていると言う意識はより強くなりました。清潔感とか、乱れていないかとか、限られた自分時間の中でもケアは最低限して、子供がいるって言ったら驚かれるくらいでいたいですね」

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ある意味で自由な範囲の中で創作をしていたレストランから、縛りのあるMarutaでのデザート開発への転向。また違った生みの苦しみがある一方で、今までは思いつかなかった閃きや発見の連続だという。

「薪火を使った料理を提供するので、もちろんデザートにも使用します。お肉や野菜だと調理の想像はしやすいのですが、オーブンとは違い下火だけなので、ケーキを焼いたりするのがなかなか難しい。お菓子となると頭を悩ますこともあります。でも季節のフルーツを丸ごと焼くと生で食べるより美味しかったり、雑草と呼ばれるスギナが庭先でよく採れるのですが、乾燥させて粉末にしたら抹茶みたいな香りがして、それでクッキーを作ったり。苦しみもあれば、目線を変えた新たな発見もあって面白いです」

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お菓子の中でも好きなのは、焼き菓子という根本さん。最近Marutaとは別に自分でもオンラインで、作ったお菓子の販売を始めた。

「好きなお菓子や、今まで作ってきた総集編という感じでスタートしました。Marutaに来るお客様は非日常を求めてくるけれど、私はどちらかというと日常の中でのちょっとした楽しみになるものや、あることでおやつの時間を設け気分転換ができたり。そういう小さな幸せを提供できたらいいなという思いを込めて作っています。特別なものというよりは、一般的だけど面白いものを意識して。今後はお菓子教室を開催したりしていきたいですね」

By bringing joy to your life through desserts, feeling accomplished after learning to make them, or making them to brighten someone else’s day, you can feel happy. Throughout time, desserts have always been special treats that bring smiles to faces.

パティシエとして常にチャレンジを続けていた5年前。子供が2人いる今は当時と同じようなペースでは働けないけれど、産む前は想像もしていなかった、レストランで働くということを実現できている。可能性は自分で決めちゃいけないと根本さんは言う。

「私にとって子供の存在は、とても大きいです。パティシエという職業を、時間が無いからと諦めずに、色んな可能性を見つけながら続けていこうと思えるのは、将来子供が自分のやりたいことや夢を諦めずに追いかけていくことを、ちゃんと応援できる自分でいたいと思っているから」

お菓子を通して生活が充実したとか、作れるようになって嬉しいとか、誰かを幸せにするようなお菓子作りをすることで、自分も幸せな気持ちになれる。お菓子は、いつの時代も人を幸せにする特別なご褒美。これから先も根本さんは小さな幸せを提供し続ける。

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PROFILE

根本理絵/ねもとりえ ⾼校卒業後、辻製菓専⾨学校でお菓⼦とパンを学ぶ。京都、⼤阪のパティスリーで約7年間働き、25歳の時にフランス菓⼦店のシェフを務め、26歳でミシュラン⼆つ星レストランに⼊り、その後シェフパティシエを約3年務める。現在は東京都調布市にある「Restaurant Maruta」でパティシエを務め、メニュー開発、製造を担う。レストラン業務と並⾏して、「LieR.oyatsu」として本格的におやつブランドの⽴ち上げる。

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